2021年10月3日日曜日

ポジティブ作業に根ざした実践(POBP)

介入マニュアル(Vol. 1)を作成しました


1.ポジティブ作業に根ざした実践とは?

ポジティブ作業に根ざした実践(Positive Occupation-Based Practice,以下POBP)とは,ポジティブ心理学,作業科学,作業療法学などの知見から,人間の健康と幸福を促進する可能性を有した作業の学習機会を提供し,その作業を実生活で習慣化できるように支援する実践方法です1)


2.POBPの有用性

POBPの有用性は,精神科領域をはじめ,地域高齢者に対してその肯定的な影響が認められています.たとえば,精神科デイケア,精神科入院作業療法,就労支援事業所などの利用者を対象にした介入研究では,通常の支援プログラムにPOBPを加えた介入群が,対照群(通常の支援プログラム)と比べてポジティブ感情や社会参加などに有用であったことが示唆されています2-4)

3)野口卓也,京極真,西本由香里,森親子,片尾勇人,細川聖司:精神障害を有する人における幸福を促進する作業療法プログラムの効果検証:非ランダム化比較試験.精神医学 62(6): 911-922, 2020.


3.どんな条件を持つクライエントに適用できるの?

POBPの適用は,その介入がクライエントの持つどのような要因(診断名,年齢,性別,治療期間,入院回数)によって影響をうけやすいのかを調査した研究もあります。その結果,POBPの介入は入院回数によって影響を受ける可能性が示唆されています。言い換えると,POBPは入院回数以外の多くの要因(診断名,年齢,性別,治療期間)には影響を受けにくい実践方法であると考えられています5)


4.POBPに関わる事例報告を確認したい

POBPの実践報告は,たとえば荒木が発表した事例報告があります6,7)。この報告では,精神科急性期病棟で療養中のクライエントを対象に,個別作業療法の支援過程の中にPOBPを加えて支援した内容が描かれています。また最近では,POBPの適用条件を踏まえた追跡調査が行われており,入院回数が多いクライエントにPOBPの適用を検討した事例報告が発表されています。

7)橋爪卓,野口卓也(2021)重度精神障害者におけるポジティブ作業に根ざした実践(POBP)の臨床有用性−入院回数が多いクライエントへの適用を通じて−:第55回日本作業療法学会(ポスター発表:精神障害,PH-16)


5.介入マニュアルにはどんな内容が記述されているの?

POBPの介入マニュアルには,精神科デイケアにおける支援プログラムでPOBPに取り組む様子が解説されています。具体的には,①POBPをプログラムとして開始するために必要な物品,②事前評価,③学習教材の選定方法,④セッション中での支援者の役割,⑤ホームワークを支援する方法などが記されています。以下には,目次の内容を紹介しています。

<目次>
定義リスト
1.はじめに
2.POBPにおける体験用シナリオ
3.目標設定
4.POBPの特徴
5.POBPの位置付け
6.POBPで支援者に求められる技能
7-1.学習教材の選択
7-2.POBPで使用する学習教材
8.POBPのセッション概要
9-1.初めてのセッション:導入と紹介
9-2.初めてのセッション:ポジティブ作業の学習
9-3.初めてのセッション:ホームワークのサポート
10-1.2回目のセッション:導入と紹介
10-2.ホームワークが難しい場合の対応例
11.おわりに
12.文献


6.介入マニュアルの入手先

POBPの介入マニュアルは,noteを通じて入手することが可能です。
購入者には,特典としてPOBPで使用する学習教材をはじめ,目標設定シート,POBPをクライエントに導入するための資料などを入手することができます。つまり,POBPを現場で開始していく上で必要となる資料は全てパッケージ化されていることになります。是非,みなさんの日々の臨床にお役立て頂けると幸いです。



2018年9月19日水曜日

EAPO転用可能性(身体障害,老年期障害編)

EAPO転用可能性の論文が新たに公開されました


先日,日本臨床作業療法研究にポジティブ作業の等化評価(以下,EAPO)の転用可能性における論文が公開されました.この論文は,身体障害や老年期障害を有したクライエントにもEAPOが使用できるかを検証した内容となります.

結論としては,EAPOは上述した障害を有したクライエントにも使用できることが確認できました.つまり,身体障害や老年期障害を有したクライエントの方々に対し,作業療法士がWell-Beingを促進する作業で支援した介入効果を一事例からでも項目反応理論により一般化した値で算出できる可能性があるといえます.

作業療法士は,クライエントに日々関わっている実践の介入効果をもっと外部にアピールしていく必要があると感じています.EAPOは,そんな作業療法士のニーズに応えることができる可能性を秘めています.是非,皆さんの臨床実践にEAPOをお役立てください.

2017年9月30日土曜日

ポジティブ作業評価:マニュアル改訂を行いました!

ポジティブ作業評価(APO-15)マニュアル改定vol.2

先日,第51回日本作業療法学会にてAPO-15における転用可能性の検討について発表してきました.この発表では,APO-15をクライエントに使用することでWell-Beingを促進する作業への関わりの状態を評価するだけでなく,Well-Beingを高める効果的な作業療法実践にも貢献できる可能性を有していることについて触れました.この度,研究が少しずつですが進展しているため,新たな情報を追加するためにマニュアルを改訂しました.よろしければ,APO-15についてご関心を持って頂けると幸いです.


APO-15って何やろ?

1)目的

・Well-Beingに肯定的な影響を与える作業にどのくらい関われているか測定する
Well-Beingに肯定的な影響を与える作業を活用した実践で,評価と介入を直接的につなぐため作業を基盤にした実践(OBP)を促進する


2)対象領域

精神障害領域
身体障害領域
老年期障害領域
大学生(成人)


3)測定結果の判断

以下のカットオフ値を参考に,基準値に満たない対象者は臨床群として判断する.
①精神障害を有したクライエントに使用する場合(43点)②身体・老年期障害を有したクライエントに使用する場合(51点)


4)資料の入手先

資料(評価用紙,マニュアル,データ入力シート)のダウンロードは無料です.
臨床,研究,教育などでご活用ください.微力ですが,APO-15がクライエントの支援に少しでもお役に立てると幸いです.


APO-15のダウンロードは,ここをクリックしてください.


5)研究協力者募集

 APO-15を研究で使用したいとご検討している方,お気軽にお問い合わせください.また,APO-15のさらなる発展に向けて共同研究を行って頂ける方も大募集しております.APO関連における研究の進捗状況はTwitterで発信しています.ご関心を頂ける方は,こちらの方も是非チェックのほどよろしくお願いいたします.



APO研究プロジェクト

代表者:野口 卓也
京極 真
Email:n.takuya19780822@gmail.com
Twitter ID:@Takuya_530822

2017年9月3日日曜日

EAPO臨床有用性

論文掲載の予定

 ポジティブ作業の等化評価(EAPO)の臨床有用性について記した論文が掲載されます.この論文では,精神科デイケアで個別支援していた症例に対し,EAPOを活用しながら関わったことを論じた内容です.具体的には,EAPOの使い方を始め,Well-Beingを促進する作業を基盤にした実践の内容などを記した内容になっています.掲載予定は来年ですが,よろしければ以下の論文をご一読お願いします.

野口卓也,京極真:精神科デイケアにおける幸福を促進する作業への関わりの状態を評価できる等化尺度の臨床有用性.作業療法 37(2): 230-238, 2018.

APO研究プロジェクトチーム
野口卓也,京極真

2017年3月29日水曜日

ポジティブ作業の等化評価(EAPO)本尺度版

APO等化尺度(EAPO)をアップデートしました!

Well-Beingを促進する作業への関わりの程度を測定できるポジティブ作業の等化評価(Equating Assessment of Positive Occupation: EAPO)の本尺度が完成しました.
本尺度開発に向けた研究では,多施設共同研究のもとで精神科デイケアを利用するクライエントだけでなく,入院療養中のクライエントにもご協力を頂きました.
そのため,EAPOは精神科作業療法が対象とする幅広いクライエントに適用することが可能となっています.さらにEAPOは,前回のバージョンよりも測定精度が良好である結果が得られています.是非,精神科作業療法の介入効果を検証する際にはご使用ください.

EAPO本尺度は,左記のリンクから入手して下さい.


APO研究プロジェクトチーム
研究代表者:野口卓也,京極真


2016年10月1日土曜日

APO-15がダウンロードできるようになりました

APO-15をご活用ください!

APO研究プロジェクトでは,多くのクライエントがWell-Beingを高め,その人らしく満たされた生活が再び送れるようになることを目標に尺度開発・介入研究などに取り組んでいます今回,APO-15のご利用をご検討頂いている支援者のために,提供させて頂く運びとなりました.是非,ご関心を頂ける方はご利用ください.


1)使用目的
・クライエントがWell-Beingに肯定的な影響を与える作業にどのくらい関われているか測定する
クライエントへの支援において,Well-Beingに肯定的な影響を与える作業を活用した実践を行う場合,評価と介入を直接的につなぐためOBPを促進する

2)対象領域
精神障害領域
身体障害領域
老年期障害領域
司法

3)測定結果の判断
以下のカットオフ値を参考に,基準値に満たない対象者は臨床群として判断する.
①精神障害を有したクライエントに使用する場合(基準値:43点)
②身体・老年期障害を有したクライエントに使用する場合(基準値:51点)

4)ダウンロード
資料のダウンロードは無料です.臨床,研究,教育などでご活用ください.
APO-15のダウンロードは,ここをクリックしてください.
なお,APO-15のマニュアルが必要な方は開発者のアドレスにお問い合わせください.

5)その他
APO-15の使用方法を詳しく知りたい,臨床研究で使用を検討している,などのご相談がありましたらお気軽にお問い合わせください.共同研究を行って頂ける方も募集しております.どうぞ,よろしくお願いいたします.m(._.)m


APO研究プロジェクト
代表者:野口 卓也
京極 真
連絡先:n.takuya19780822@gmail.com





2016年7月4日月曜日

APO-15転用研究(身体障害,老年期障害)

APO研究プロジェクト

〜第3弾:老年期障害の方々に対する活用に向けて〜


 APO-15は精神障害者版として当初開発されました.APO研究プロジェクトでは,精神科医療の動向を考慮し,老年期障害の方々にも活用できるかを検証していきました.
本研究の結論としては,APO-15が老年期障害の方々にも使用できることが明らかとなっています.またAPOの評価結果によっては,クライエントがAPO-15の項目でWell-Beingを促進するどの作業によく関われているか,あるいは関われていないのか,といった潜在ランク理論を用いた段階評価における傾向についても報告しています.
 現在,学術雑誌PeerJで査読中の論文となりますが,プレプリント版の運びで一般公開されましたので皆さまにもご紹介させて頂きます.
 ご関心のある方は,是非ご一読頂けると幸いです.

下記のタイトルをクリックすると論文を閲覧できます.